マーケットってどんな場所?『中嶋養蜂』

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皆さんは、モノを買いに行く時はどこに行きますか?
近所のスーパーや商店街、もしくは仕事帰りにフラッと立ち寄るお店。はたまたオンラインショップでポチッと
ボタンを押せば、翌日には届く時代です。限られた日程と時間の中で、対面で販売する“マーケット”には一見、
不自由なことも多く見えます。それでもマーケットで販売する出店者さんには、きっとマーケットだからこその
エピソードや想いがあるはず。

今回は、COMMON FIELD MARCHEにご出店いただいている中嶋養蜂の中嶋さんにお聞きしました。

  • Photo:

    Mana Hasegawa

  • Text:

    Daisuke Suzuki

本日はよろしくお願いいたします!はじめに、どのような商品を販売されているか教えていただけますか?

日本一のお茶の産地、静岡県の静岡空港の近くにある牧之原市というところで一人でやっている小さな養蜂場です。とことん「濃さ」にこだわった濃厚なはちみつを販売しています。

静岡県の牧之原市は、もともと養蜂が盛んに行われている地域なのでしょうか?

牧之原市は茶畑が広がる自然豊かな場所なのですが、この市で養蜂をやっている農家は3件ほどしかないんですよ。僕は山奥で一部のスペースを借りて養蜂しています。みかん畑の場所も限られているので、牧之原市でみかんのはちみつを作っているのは僕だけだったりします。

ミツバチが集めた花の蜜によって、はちみつの色はもちろん味や香りがまったく違う!

それは貴重ですね。本日は4種類の商品をお持ちいただいていますが、それぞれどのようなはちみつなのでしょうか?

今日は、自分たちで採蜜した2種類のはちみつと、知り合いの養蜂家から取り寄せた2種類のはちみつを扱っています。牧之原市では5月の下旬にみかんのはちみつを、6月の下旬にイヌモチ(クロガネモチ)という木の花から採れるはちみつを採取しています。どちらもさっぱりとした口当たりが特徴的で、特に女性の方に人気がありますね。

また、色々な種類のはちみつをお客さんに届けられたらと思い、知人の養蜂家から2種類のはちみつを仕入れています。「百花蜜」という、いろいろな花の蜜でできた北海道産のはちみつと、透き通った琥珀色の長野県産アカシアの2種類のはちみつを取り寄せています。自分たちで採った百花蜜は全てスーパーに卸していたり、アカシアは静岡県で採れなかったりするので、これらのはちみつを知人から仕入れています。

最近は猛暑が続いていますが、地球温暖化の影響で花の開花がずれるなど、はちみつへの影響はあるのでしょうか?

今のところは問題ないですが、桜の開花時期が早まると、他の花の開花も早まる傾向があります。もし、みかんとクロガネモチの開花の時期が重なってしまうと「単花蜜」の採蜜ができなくなりますね。ただ、花もミツバチもコントロールできないですし、自然を相手にしているので仕方のないことだと思います。

お一人で養蜂されているとのことですが、どのようなきっかけで養蜂を始められたのですか?

以前は自動車の工場で10年ほど勤めていたのですが、ある時にふと、会社を辞めて周りの人がやっていないことに挑戦したいと思ったんです。そんな中父親が趣味で養蜂をやっていて、自分でも養蜂をやってみようと始めたのがきっかけです。

小さい頃から手伝ってはいましたが、最初の1年ほどは父親の手伝いをしながら養蜂について改めて学び、その後独立して活動しています。それまでは、はちみつの販売も自宅の前で無人販売するくらい。独立してからは地元のマルシェで販売したり、地元のスーパーに置いてもらったりしています。

静岡県の地元だけではなく、神奈川や東京の方のマーケットにも出店されています!

元々ご家族が養蜂されていたのですね。中嶋養蜂さんのはちみつへのこだわりに「濃さ」がありますが、その「濃さ」の理由はどこにあるのでしょうか?

はちみつの熟成時間に秘密があります。ご存知の通り静岡は、お茶の名産地でどの家にも茶畑があるのが普通だったんです。祖父も茶畑のお世話をしながら養蜂もしていたのですが、ある時お茶とはちみつの収穫の時期が重なってしまいました。お茶の仕事を優先したところ、はちみつの熟成時間が長くなってしまい、偶然にも濃いはちみつが取れたんですよ。

茶畑があったからこそ、偶然に「濃い」はちみつが生まれたのですね!

そうなんです。実際に食べてみたら美味しかったですし、小さな養蜂場なので他の農家や企業とどう違いを出していくのかは考える必要がありました。なので、この「濃さ」を中嶋養蜂らしさとして大事にしていこう、と。

マーケットでお客さんに直接販売されているのも、そうした特徴を伝えられることが大きいのでしょうか?

お客さんに直接販売ができると、僕のはちみつの良いところも悪いところも伝えられますし、試食も提供できるのでそれが大きいですね。一度舐めてもらえればその違いがわかるので、はちみつが好きな方には気に入っていただけています。

それに、スーパーなどで置いていただく際は手数料がかかりますが、直接販売する場合は特にかかりません。その分お客さんにお手頃な価格で販売できるので、手に取っていただきやすくなるかと思います。

お客様とのコミュニケーションが大事なのですね。商品についてお伝えする上で何か工夫されている点はありますか?

マーケットなどで販売する時は僕がお店に立ちますが、はちみつのアレンジ方法や美容効果などの話は説明が難しかったり、伝わりづらかったりします。そこで、奥さんに「はちみつマイスター」の資格を取得してもらいました。はちみつの作り方だけではなくて、はちみつの使い方や効能などもしっかりとお伝えできるように、一緒にマーケットの店頭に立ってもらうこともあります。

あとは、お客さんとの信頼関係を大切にしていて、マイナスのことでもしっかりと伝えるようにしています。例えば、お客さんに「非加熱のはちみつですか?」と質問されることも多いのですが、はちみつが固まってしまう冬の時期だけ、非加熱の部類に入る「低温加熱」をしてはちみつが固まらないようにしていることを正直に話してます。

実際45℃以下であれば、はちみつの成分が壊れないといわれています。その温度帯で、8時間かけてはちみつを解凍しているんです。非加熱のはちみつにこだわって、固まったまま販売することもできますが、それだとお客さんは使いづらいと思うのです。マイナスに聞こえることでも、正直に話さないと、フェアじゃない。理由も伝えることで納得してくれることも多いですしね。

ブースには、はちみつそれぞれの紹介や特徴をまとめたポップが。ミツバチや花のことなど、ぜひ中嶋さんに聞いてみてくださいね!




写真では、北海道産「百花蜜」を試食。はちみつとは思えない、ラベンダーの香りもしっかりと残った風味にビックリ!

生産者でありながら、販売の現場に常に立たれていることに中嶋さんのこだわりがありそうです。

野菜を作っている農家もそうだと思うのですが、生産者は自分が作った食べ物を多くの人に食べてもらいたい、と思っている。お客さんをただ待つのではなく、自ら出ていけば直接商品について話しながら販売ができるし、試食や調理・加工した形での提供など色々と工夫もできます。

それにもし、会社の中で生産者とは別に販売員がいても、作った本人以上に商品が生まれた背景や価値を伝えるのは難しいと思っています。今年と去年のはちみつの様子や味の違いは、生産者にしかわからない。だからこそ、常に販売の場に立つようにしています。

自分の手で、はちみつを届ける。販売の現場に立つことを大切にされている中嶋さんが思う『良いマーケット』とはどのようなものでしょうか?最後にお聞きしても良いですか?

食にこだわりのある、本物を求めているお客さんの多いマーケットは良いなと思います。そのためには、野菜やはちみつなどを自ら作っている生産者も必要だと思いますし、それだけではなくて料理・飲み物の作り手やハンドメイドなど、クリエイターの方々もいると良いですよね。お客さんとして楽しみ方が広がるし、多くの方々が訪れる場になるのではないかと思います。

今回は静岡県の牧之原市の数少ない養蜂家の一人である中嶋養蜂さんにお話を伺いました。こだわりの一つである“濃さ”が、お茶の採取の時期が重なって結果、偶然に生まれたというのは面白いお話でしたね!

ぜひ、中嶋養蜂さんが出店の際はマーケットの会場まで足を運んでみてください!実際にはちみつの“濃さ”を味わったり、中嶋さんにはちみつのパワーやレシピを聞いてみたり。中嶋さんと色々な話をして、はちみつのことをより知れたら、はちみつの味わい方も変わりそうですね!

プロフィール
中嶋養蜂
日本一のお茶の産地、静岡県静岡空港近くの牧之原市で養蜂を営んでいる。「食卓のひとつにはちみつを」をコンセプトに、独自の方法で採蜜した「濃さ」にこだわったはちみつを届けている。

公式HP
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