あの人の根っこ|『青果ミコト屋』鈴木鉄平さん

feature

葉っぱ、茎、花を支える根っこは土の中。
普段目には見えない、あの人を支える強い根っこ。
「今の活動、創作、仕事をするきっかけは?」
「好きなことを続ける原動力はなんだろう?」
なんだか気になるあの人の“根っこ”=“ルーツ”を掘ってみよう!
今回は『青果ミコト屋』の鉄平さんのところへ訪れ、お話を伺った。

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    Mana Hasegawa

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    Mana Hasegawa

プロフィール
青果ミコト屋|鈴木鉄平さん
鈴木鉄平さんと山代徹さんの同級生コンビが2010年にはじめた、『青果ミコト屋』。旅先で食べた“小さなリンゴ”をきっかけに「ほんとうのおいしいってなんだろう?」を考えるようになる。『青果ミコト屋』の立ち上げ以降は、店舗を持たずに全国を旅しながら野菜を届ける八百屋に。創業10周年を機に神奈川県青葉台で『Micotoya House』を構え、野菜に農家の人柄、ストーリーをのせて食卓に届けている。
好きな食べ物は“トンカツ”。こっそりとトンカツ屋巡りをするのが趣味。

HP
Instagram:@micotoya@kiki_natural_icecream



渋谷駅から田園都市線で30分ほどの青葉台駅を降り、歩くこと15分。見渡す限り穏やかな住宅街が広がり、「本当にここであっているのだろうか?」と少し不安になる頃。角を曲がると、藤の木とキウイの蔦に半ば覆われた一軒のレンガ造りの建物が現れます。
“旅する八百屋”として全国を旅してきた『青果ミコト屋』が、創業10周年を機に根を張った場所がここ、神奈川県青葉台『Micotoya House』。

店先には、“ICE CREAM”と大きな看板が置かれたキャンピングカーと、手際よく料理を仕込む音とともに美味しそうな香りがお出迎え。店内には、思わず心が弾むアイスクリームが並び、奥には一つひとつ時間をかけて読みたいPOPとともに旬の野菜や果物、グロサリーの数々。
訪れた人がみんな、笑顔になって帰っていく。そんな陽だまりのような場所の中心にいるのが、『青果ミコト屋』代表・鈴木鉄平さんです。

「流行りの店よりも、今にも潰れてしまいそうな人情味のある店が好き。なんか、安心するんだよね。そういう“人間臭さ”に触れたいんだと思う」

学生時代の思い出話は、ハートフルなサプライズから、ハードなイタズラまで。お茶目な鉄平さんらしいエピソード満載でした!



「サプライズとか、いたずらが昔から好きでね。今でもお客さんにおまけを渡しすぎて、スタッフから注意されるんです」そう笑って話す鉄平さんの人柄も感じる『Micotoya House』は、一度訪れたらきっとファンになってしまうような、遊び心と温もりに包まれています。

「高校生くらいの頃から、ご飯を食べに行くとなったら流行りのお店じゃなくて、“今にも潰れそうなお店”へ行くのが好きなんだ。おじいさんおばあさんの2人が手づくりでやっているようなお店に若者が行くと、喋りかけたり可愛がったりしてくれるでしょう。そういう“人情”みたいなのが好きだよね」

『Micotoya House』のある青葉区周辺は、住宅街が広がり駅へいけば一通りのモノが揃う街。鉄平さん曰く、「会話はしなくても暮らしは成り立つエリア」だからこそ、『Micotoya House』ではコミュニケーションを大切にしている、と言います。
「喋らなくても過ごせちゃうエリアだから、余計にコミュニケーションというか“温もり”を欲するのかもしれないね。ミコト屋のスタッフには、みんなに話しかけて欲しいって伝えているよ」

取材した日はクリスマス当日。常連さんのお子さんに「サンタさんからもらったの?」と話しかける鉄平さん

「昔から、『男はつらいよ』の寅さんとか『釣りバカ日誌』が好きでさ。下町人情っぽい感じっていうのかな。多分安心するんだと思う。居場所感があるというか、さ。“人間臭さ”に触れたいんだよね」


「野菜には農家の想いやこだわりとか、ストーリーがいっぱい詰まっているじゃない。そういうものが宿った野菜は、やっぱりグッとくる。だから、想いの詰まった野菜を販売して得たお金は、愛のある方向に流したい」

青果ミコト屋の繋がりで全国各地の農家さんから届く、愛と手間ひまの詰まった旬の野菜たち



「豊かさって?」「人生とは?」「幸せって?」「稼ぐとは?」そんなクエスチョンの答えを『旅』に求めた鉄平さん。お金にまつわる想い、お金が社会をつくっているという感覚が、割と若い頃からあったといいます。そんな鉄平さんが、好きな言葉を教えてくれました。

「いいかい、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ。それが人間偉すぎもしない、貧乏すぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ。」

美味しんぼ 第28話「トンカツ慕情」より



「美味しんぼのこのセリフがすごく好きでね。そんなに偉くならなくていい。好きな時にトンカツが食べられるくらいの豊かさで充分だと思っている」

ミコト屋だからこそ集まった野菜やジビエを生かした特製クリスマスオードブルは、見た目もハッピー!


できる限りゴミを減らしたい!ということで、お気に入りのお皿を持ってきてもらえたら、そのお皿に盛り付けを。お家でそのままクリスマスパーティーが始められます



鉄平さんが“今にも潰れそうなお店”に好んで行く理由は、人の“温もり”だけではありません。そこには鉄平さんらしい『お金の使い方』への想いがあるからでした。

「お店に行けば、そのお店を応援することになるでしょう。野菜も一緒だよね。循環に即した野菜を育てている人の野菜を買えば、その人だけではなくて、その農法を応援することにもなる。一方で、農薬や化学肥料漬けの野菜を買えば、慣行農家を応援するというよりは、農薬や肥料を扱う企業を応援することになると思うんだよね」

ミコト屋の野菜や果物は、セルフ計量、セルフ梱包。自分で手に触れ、買い方を聞く“ちょっとの面倒くささ”が不思議と楽しい。



「野菜には農家の想いやこだわりとか、ストーリーがいっぱい詰まっているじゃない。そういうものが宿った野菜は、やっぱりグッとくる。だから、自分がそうやって想いの詰まった野菜を販売して得たお金は、“愛”のある方向に流したいわけよ。全然知らない誰かのところに流れるよりは、想いを持ってつくっている人のところへお金を流したい」

最近はレジも無人になり、人と話さずにモノを買えるようになりました。なんでも一ヶ所に揃っているスーパーマーケットが増え、八百屋や酒屋もない街の方が多いようにも思います。「便利になった」とも言える反面、人との繋がりは薄れ、食べることも機械的になったとも言えます。
だからこそ、私たちは、粋や人情を大切にする『Micotoya House』のような居場所を求めるのかもしれません。

「ネガティブをポジティブにするの、得意なんだ。良い時だけシェアするんじゃなくて、悪い時こそシェアするべきだって思う。誰だって、間違えることはあるんだから」

「うちはなんでもオープンで隠さない。その方が気持ちがいい」と話す鉄平さん。この日も店舗の奥、扉で隠すことなく野菜セットの梱包作業が行われていた



毎日たくさんの情報で溢れる昨今。そんな、情報疲れした頭と心にもすっと届くのが「青果ミコト屋」のInstagram。季節を感じる旬の野菜に、農家さんの紹介。何よりも、“純度100%”の「美味しいから食べてみて!」という気持ちがストレートに伝わってきます。
投稿は、イベントや野菜の情報だけではありません。とても印象的だったのが、2023年10月23日の投稿。『求む!大人買い!』という文で始まるこの投稿は、手違いで予定の10倍量の規格外人参が届いてしまったというのです!しかし、この投稿から数日で人参は全て完売。

「ネガティブをポジティブにするの、得意なんだ。誰だって間違えることなんていくらでもあるじゃん。間違えたから、送り返すとかしていたら送料もエネルギーも無駄だよね。これは、みんなでシェアするべきだと思った。良いところだけシェアするんじゃなくて、ね」

スタッフの間では「ポップスター」、「MJ」とも呼ばれている『KIKI NATURAL ICECREAM』のアイスクリームたち


たっぷりの2番茶葉に香りを移したミルクと煮出し茶葉寒天がアクセントの「凍頂ウーロンミルクティー」



「アイスもネガティブをポジティブに変えられるもの。ロスになっちゃうものがポップで美味しいアイスになる。そういうのが好きだし、得意だよね」

ミコト屋の手がける『KIKI NATURAL ICECREAM』は、規格外やイレギュラー、ロスになる素材を生かしたクラフトアイスクリーム!素材になるのは、何も野菜や果物だけではありません。
醤油蔵の醤油カスやミルクティーの2番茶葉、形の崩れてしまったチーズケーキなどなど。アイスクリームを始めた当初には思いもよらない“素材”がミコト屋に集まり、唯一無二のフレーバーが日々誕生しています。

冬は柑橘類も豊富!見慣れない名前や色、形の柑橘類も、手書きのポップにつられてついつい全部食べてみたくなる



「野菜って、本当は消費者と農家が直に繋がって買った方が良い。八百屋は、野菜を地方から取り寄せて、発送して…。鮮度もコストも、エネルギーも正直無駄じゃない。それでもやる意味を考えると、野菜を人に繋ぐ『コネクトする場所』だと思っているんだよね。
だから、ただ野菜を売る場所とは思っていないんだ。誰かの生活の楽しみになるような仕掛けやお店、空間づくりは全力でやっている。それは、他にはない“ミコト屋”でしか味わえないものをやりたいし、すごく考えていることだな」

店頭で“まかないランチ”をつくるスタッフ・渉さんをサポートする鉄平さん。サッと手を差し伸べ、臨機応変に支え合うミコト屋の皆さんは、まるでファミリーのよう



自身で“マネタイズ”は苦手と仰る鉄平さん。時には利益よりも人を喜ばせること、楽しんでもらうことを優先してしまうことも。ですが、その根底には『八百屋として野菜を売っている“この場所”を好きになってもらいたい』という想いがあるからこそ。

鉄平さんと初めて話した時、どこか懐かしい、アットホームな気持ちになったのを覚えています。そこには、何十年にも渡って愛されている『男はつらいよ』寅さんのように、人への人間臭い“愛”を感じたからかもしれません。



青果ミコト屋
高校の同級生である鈴木鉄平さんと山代徹さんの2人が、2010年に立ち上げる。“ミコト屋号”というキャンピングカーで旅をしながら日本全国の農家を回り、生産現場へ足を運ぶ。自然栽培の野菜を中心に農家の想いやストーリーを届けている。2021年、2人の地元である神奈川県青葉台に、拠点となる「Micotoya House」をオープン。規格外やイレギュラー、ロスになる素材を生かしたクラフトアイスクリーム『KIKI NATURAL ICECREAM』も手がけている。

青果ミコト屋/Micotoya House
KIKI NATURAL ICECREAM
HP
Instagram:@micotoya@kiki_natural_icecream



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