わたしのお店、街と生きるお店「おこめぶらん」

feature

街を歩いていると、意外なところにお店がある。
この街には魅力的なお店がたくさんあるらしい。

店主とたわいのない話をしていると、他にもお客さんが。
会話が弾み、笑顔が生まれ、心地の良い時間や空間が広がっていく。

わたしのお店が、街と生きるお店へ。

今回は、東京・港区の南青山二丁目で米ぬかを活用した商品を販売されているおこめぶらんさん。この街でお店を始められた経緯や、マーケットに関わることで生まれたもの、これからの自分たちと街の未来などについて、店長の川野さんにお話をお伺いしました。

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    Daisuke Suzuki

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    Daisuke Suzuki

おこめぶらんさんは昨年の9月に南青山にお店をオープンされていますが、どのようなお取り組みをされているのでしょうか。

“まいにちを、整える。”をコンセプトに、身体の内側と外側の両面から美容を支えられるよう、米ぬかを活用した米油やスムージーといった食べ物をはじめ、化粧品や美容品など、日常的に利用できる商品の製造・販売をしています。

身体の外側を整える方は多い一方で、内側を大事にされる方はまだまだ少ないので、日本人にとって身近な米ぬかを通じて健康に意識を向けるきっかけが提供できたらと思っています。

米ぬかに着目をされたんですね。

大元が『神明』という老舗の米卸で、自社の精米工場もあるので、そこで発生した大量の米ぬかを何か活用できないかという経緯から事業に取り組み始めました。

お店にもこだわりがいくつもありまして、米蔵をリノベーションしたような内装となっていて、米ぬかを活用した様々な商品をご覧いただけるだけではなく、発酵ランチやスムージーなどを店内でお楽しみいただくこともできます。

米油も従来の製法と異なり、『神明きっちん』が開発した『ナチュラル・プレス製法』で米ぬかから油を圧搾し、米本来の風味や栄養成分が損なわれない『圧搾米油』を作っています。店内では製法のプロセスを壁面に図示していたり、味の違いを比べられるよう試飲もできるので、工場見学のようにご覧いただけます。

こだわりという言葉を使われていましたが、特に大事にされてきたことはありますか。

若い世代の方々を中心に米離れが進んでおり、その結果求められる田んぼの数も減少してしまっています。様々な米農家さんと取り組んでいる企業として、おこめぶらんでは米ぬかを通じてお米の様々な魅力や可能性を色々な角度からお伝えするとともに、綺麗な田園風景やお米の食文化が失われないよう守りたいと思っています。

店内に田園風景のポスターカードが置かれてましたが、そのような背景があったのですね。お店にお越しになる方は若い世代のお客さんも多いのでしょうか。

若い世代の方々もご利用いただけるよう、米ぬかスムージーをお手頃なお値段で販売していたり、可愛らしいパッケージデザインを登用していたりしますので、そうした方々もお越しになります。

ただそれ以外の幅広い世代の方々にも利用していただいてまして、特にお店の近隣に住んでいらっしゃるお客様が多いです。

地域のお客さんが多いのは少し意外でした。

オープン時から地域密着を心がけていて、『飲める米糠』をはじめ、ドレッシングやクッキー・バーなど日常生活に溶け込める商品を販売しているのでとてもありがたいです。

お店の前の坂を降ったエリアにお住まいのお客様が多いのですが、坂を登った場所にスーパーがあるので日々のお買い物の延長でお店にもお越しいただけます。食や環境に関心の強い方も多いので、米油は容器をお持ちいただけると中身だけご提供させていただく詰め替え販売のオプションなど、日常に寄り添ったエコな取り組みにも力を注いでいます。

そうした地域のお客さんとの印象的な思い出やエピソードはありますか。

地域のお客様が犬の散歩ついでにお店に寄っていただけるのはとても嬉しいです。スタッフの顔を覚えていただいて、挨拶をしたり、雑談をしたり。そうした会話の中で地域のお客様がどのように過ごされているのか、食や健康で気になっていることはあるかなどのお話も伺えるので、今後も日頃のコミュニケーションは大事にしたいと考えています。

おこめぶらんさんはキッチンカーもされており、南青山一丁目で開催しているあおいちマルシェにもご出店いただいています。改めて、なぜマーケットに参加いただけたのでしょうか。

マルシェにお越しになるお客様は日常から食や環境に高い意識を向けられている方が多い印象です。おこめぶらんのキッチンカー『KOMENUCAFE』も材料にこだわったメニューを提供していて親和性が高いと感じているので、以前からいくつかのマルシェにご出店させていただいていました。

そうした中で、同じ南青山で開催しているあおいちマルシェにお声がけいただき、より地域の方々ともコミュニケーションが取れると思い参加をさせていただきました。

マーケットに参加することで生まれたものや気づきはありますか。

先ほどお話した犬の散歩中にお店にお越しになるお客様に、「犬がいるのでお店ではゆっくりできなかったけど、このマルシェなら気軽に犬と一緒に立ち寄れて利用できるので嬉しい」というお言葉をいただきました。

あとは、あおいちマルシェに出店したことで、お店とマルシェのそれぞれにお越しになったお客様に互いを紹介できるので、よりお客様との繋がりを深められたように思います。

ありがとうございます。おこめぶらんさんは実店舗やキッチンカーなどリアルな場を大切にされていますが、お店にはどんな役割があると思いますか。

やはり、お客様の顔を見て、直接コミュニケーションを取ることではないでしょうか。商品の裏側にあるストーリーや製法へのこだわり、身体への様々な効用など、文字だけでは伝えきれないことも多々ありますが、会話をすることでしっかりと伝えることができます。

また、おこめぶらんでは商品の販売と開発を同じチームで行っているので、お客様からいただいたお声を反映しやすい体制となっています。お客様がお求めになっていることを把握し、それに基づいた商品やサービスを届ける上で、やはりお店があることの価値は大きいと思います。

人や街との関わりで大切にされていることはありますか?

“心のよりどころ”となれるよう、日頃の挨拶や商品の説明をする際も、お客様の顔を見て様子を伺いながら、丁寧なコミュニケーションをすることを心がけています。そうした会話の中で、お客様の食生活や健康で気になる点を伺いし、少しでも支えになれたらと思っています。

今後、この街にはどのようなものが求められると思いますか。また、そのためにどのようなことに取り組んでいきたいですか。

この街の住民の方はサステナブルへの関心が強いので、もっと積極的に取り組んでいきたいです。例えば、今は量り売りを米油だけ行っていますが、グラノーラなど他の商品にも広げていきたいですね。

店内でワークショップも実施して、米ぬかの活用の仕方を学んだり、生産者や田園風景が頭に浮かぶような体験の機会も提供したいなと。あとは、近隣の飲食店やエステなどのお店と連携して、米ぬかが日常の色々な場面にある暮らしを形作って行けたらと思っています。

最後に、「良いコミュニティ」とはどのようなものだと思いますか。

“安心ができる場所”だと思います。お店とお客さんとの関係でいえば、散歩ついでにお越しいただける住民の方のように、互いに気遣いや寄り添えることが良いと思います。

そのために、日頃から丁寧なコミュニケーションや商品作りを心がけ、感謝を一つ一つ積み重ねることでそうした輪を広げていきたいです。

今回は、あおいちマルシェにもご出店いただいているおこめぶらんの川野さんにお話を伺いました。日本人に馴染みのある米ぬかを活用して生産と消費を繋ぎ、環境に優しい日常を作り、地域の健康を支える。これからの街に求められる要素がたっぷり詰まったお店だと感じました。

おこめぶらん 南青山本店

住所:

東京都港区南青山2丁目27番地19号 エムプレイス青山1階

| 地図
営業時間:

11:00~19:00

定休日:

月曜

わたしのお店、街と生きるお店
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