あの人の根っこ|『ONIBUS COFFEE』坂尾篤史さん

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葉っぱ、茎、花を支える根っこは土の中。
普段目には見えない、あの人を支える強い根っこ。
「今の活動、創作、仕事をするきっかけは?」
「好きなことを続ける原動力はなんだろう?」
なんだか気になるあの人の“根っこ”=“ルーツ”を掘ってみよう!
今回は『ONIBUS COFFEE』の坂尾さんのところへ訪れ、お話を伺った。

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    Mana Hasegawa

  • Text:

    Mana Hasegawa

プロフィール
ONIBUS COFFEE|坂尾篤史さん
バックパックで訪れたオーストラリアでカフェ、コーヒーに魅了され、帰国後はコーヒーの修行を始める。2012年1月に独立し、世田谷区奥沢に『ONIBUS COFFEE Okusawa』をオープン。スペシャルティコーヒーの自家焙煎、飲食店などへの卸売、開業支援などを行う。趣味は日本の歴史系YouTubeを見ること。古事記や古墳の話が特に好き!

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都立大学駅から商店街を抜け、紅葉した落ち葉を踏みしめながら歩くこと20分。都会の雑踏を感じさせないゆったりとした住宅街の中に、突如、コーヒーの香りとともに木のぬくもりを感じる扉が現れます。そばには、ガラス越しに大きな焙煎機。

この日、坂尾さんに会いにお伺いしたのは、東京・都立大学にある「ONIBUS COFFEE Yakumo」。ONIBUS COFFEEは、2023年12月現在、系列店ABOUT LIFE COFFEE BREWERS含む、都内6店舗、栃木1店舗、海外3店舗(ベトナム・タイ・台湾)を経営。2012年に「ONIBUS COFFEE Okusawa」をオープン以来、新しい場所、仲間を増やしながらコーヒー愛のある人が集まる人気店へと成長しました。

「自分が何をしている時にテンションが上がるか、というのを考えた時、その当時なかったものを自分たちで一からつくることが楽しいなって。そう気がつきました」

「コーヒーと出会っていなかったら?本当、どうしようもない人間だったと思いますよ」と笑いながら話す坂尾さん

「ONIBUS COFFEE Okusawa」がオープンして、もうすぐ12年。「スペシャルティコーヒー」や「浅煎りコーヒー」という言葉が浸透していなかった2012年から、とにかく足を動かし続けた坂尾さん。意外にも、ずっと飲食店に勤めていた訳ではなく、コーヒーに出会う前は大工でした。

「建築、いわゆるゼネコンで働いていました。その後、父が大工なので、2年ほど一緒に働いていましたね。コーヒーと出会うのは、その後のバックパッカーでの旅がきっかけなんです」卒業文集でも、“大工さん”と書いた坂尾さん。大工のお父さんの後ろ姿を見ながら、ないものは自分でつくり出す環境が身近にあったのかもしれません。

「バックパックを始めたのも、大工の世界が“とにかく早く、安く”みたいな気風が『面白くない』と感じていたのもありますね。そういえば、料理人になりたいと思っている時期もありました。高校生の頃は飲食店ばかりでアルバイトしていて。目の前で喜んでもらえることが嬉しかったんですよ。
よく内省するのですが、自分が何をしている時にテンションが上がるか、というのを考えた時、その当時なかったものを自分たちで一からつくることが楽しいなって。そう気がつきました」

目の前でゆっくりと抽出されるコーヒーを眺められる。待つ時間もカフェの醍醐味。

バックパッカーで旅をして最初に訪れた国は、オーストラリア。そこで坂尾さんはカフェ、コーヒーと出会う。以降、各国のカフェを巡りながら1年間のバックパックを続けるのです。

「カフェに行くと現地の人に繋がったり、旅人同士の情報交換の場所になったりとか。カフェが常に人と出会う場所、次の目的地に進むための場所になっていたんです。『美味しいコーヒーとカフェが街にあったら、すごくいいな』みたいなことを思って、日本に帰ってきました」

ONIBUS COFFEEオープン10周年に坂尾さんが書かれたブログでは、『カフェやコーヒーショップがあることで暮らしは豊かにできる。この言葉を、最近は自信を持って言えるようになった』と綴っています。ぼんやりとした想いが、確信に変わったのはコロナの影響も大きいそうです。

「人となるべく会わないように、という時期でもカフェに来ることで、生存確認じゃないけど、人と話ができて良い息抜きだよね、みたいな言葉をたくさんもらいました。みんなコミュニティに入っていると感じてくれているんだな、と印象深かったですね」

「本来できるはずのことをどんどん外注していくことで、“持続可能”とはかけ離れていく気が漠然とします」

スタッフとともに時間をかけ、DIYでつくった「ONIBUS COFFEE Yakumo」

ONIBUS COFFEEといえば、ただコーヒーを淹れるだけではなく、美味しい1杯のコーヒーができるまでの道を辿り、コーヒー豆の原産国への訪問も行っている。その取り組みは、ドリンク・コーヒー豆の量り売り、店舗ででたゴミのコンポスト化などと多岐に渡ります。地球になるべく負担のない循環の仕組みを取り入れながら、コーヒーを届けています。

「コーヒーを知ることで、世界の経済も土壌の微生物のことも見えてきます。サステナブルなことをしようと思ってしているというよりは、カフェとしてできることをやりたい。
原産国に行くと、現地の人は基本的にDIYなんですよね。無いモノは、自分たちでつくる。僕らもDIYできることっていっぱいあるけど、なんでしないんだろうな、みたいなことは思います。できることはやった方がいいな、と。みんなでやれば、楽しいし、仲間意識も生まれますしね!」

DIYへの想いは、コロナ化で勉強した『パーマカルチャー(永続性、農業、文化を組み合わせた造語。人と自然がともに豊かになるためのデザイン手法、考え方、暮らし方)』の影響もあると言います。

「パーマカルチャーの中には、自分たちの半径数十メートル以内、自分たちのできる範囲内にあるモノでどう豊かに生活していけるか、を考える要素もあります。
本来できるはずのことをどんどん外注していくことで、なんだか“持続可能”とはかけ離れていく気が、漠然とします」

木の緩やかなカーブがほっこりするカウンター。白い空間に、温かみのある木材が映える



手仕事の余韻を感じる店内。ほっとする居心地の良さは、DIYにもあるのかもしれない。




「カップのデザインは、土と人をイメージしています。土には多様性がある。多様性がない土は、できないし、生まれないんですよね」

日本の歴史について話す坂尾さんは、生き生きと楽しそう!

坂尾さんにとって、コーヒーは切っても切り離せない関係。そんな坂尾さんに、最近のマイブームや趣味を聞いてみました。そうすると、「日本の歴史とかが、好きなんですよ」とキラキラとした顔で話はじめる坂尾さんに出会えました。

「日本の歴史、古事記や古墳が好きなんですよ!古墳時代に分かったことは、現代の日本にも繋がっていることが多いんです。そういうことを知るのも面白い。よくYoutubeで関連動画を観て楽しんでいます」

オレンジや茶色の暖色の円が重なり合うデザインには、土と人、そして多様性への想いが込められている

古墳の話しをしている中で、「土、土壌の話も好きですね。ONIBUS COFFEEのカップのデザインも、土と人をイメージしているんです」。趣味の話から、お店に繋がる素敵なエピソードも聞けました。

「土って多様性があるんです。多様性がない土って生まれない、できないんですよね。土の中の菌には、淘汰される菌もあるし、活発になる菌もある。そういうのを繰り返してできるのが土。
カップのデザインも、重なり合っているのが生物とか多様性っていうのを表現しています。チームつくりもそうですよね。いろいろな人がいて、重なり合うから良いチームができる。その状態を良くするためにまたお互い助け合う。そういう想いをデザインにしてもらいました」

日本の歴史について話す坂尾さんが同じくらい笑顔になったのは、息子さんについてお話しされている瞬間でした。「選択肢を一つにしなくていいんだよ、ってよく息子に言っています。まだよく分かっていないと思うけれど。これとこれ、どっちが好き?じゃなくて、全部選んでいいんだよ、って」そう話す坂尾さんの表情は、とても優しい顔をされていました。
来年で「ONIBUS COFFEE」がオープンしてから12年。また、ここからの「ONIBUS COFFEE」の動きがとても楽しみです。


ONIBUS COFFEE
『コーヒーで、街と暮らしを豊かにする』をビジョンに、カフェやロースタリーで日常にとけ込んだ一杯を届けている。その取り組みは、コーヒー豆の品質、安全性・適切性を追跡するトレーサビリティにこだわるだけには留まらず、なるべく地球に負荷のかからない循環の仕組み作りと多岐に渡る。

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