末永いお付き合い|『roots in field』内田皓基さん

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壊れても修理に出してまた使う
無くしてしまったら代用が効かない
実用性や機能性が二の次になってしまう
たとえ使えなくなったとしても手放せない
そんな私たちの中に込み上げる、愛着。
何かを愛おしく思う気持ち、大切にする気持ち、大事にしたい。
自身が“愛着”のあるものについてお話をお聞きします。
今回は『roots in field』の内田さんのところへ。

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    Mana Hasegawa

  • Text:

    Mana Hasegawa

プロフィール
roots in field|内田皓基(ひろき)さん
神奈川県川崎市にて、約50年以上続く植木農家『内田植木』に生まれる。現在は、合同会社『roots in field』で、育成から手がけた樹木を使い、植栽工事・植栽設計・植栽コンサル・植栽を使った空間演出をしている。種や苗から何年、何十年もかけて育てた樹木を生かし、さまざまな人と場へ樹木との出逢いを届けている。

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良き遊び相手から仕事の相棒へ!曾祖父さんの代からある担ぎ棒

すっと伸びた棒は、程よい太さと重量感。内田さんの隣がよく似合う

「担ぎ棒っていうモノがあるんです。昔からの道具は山ほどあるけど、“愛着”のあるモノで、パッと浮かんだのは担ぎ棒ですね」内田さんの口からでてきたのは、“担ぎ棒”と言う言葉だった。普段の生活ではなかなか耳にしない、その道具について聞いてみる。

「“担ぎ棒”って、昔の重機がない時代、重い物を運ぶ時に使われていました。肩の上に担ぎ棒を乗せて、天秤みたいに運びたい物を両端に吊るすんです。野菜の移動販売や石とか、それこそ植木を運ぶ際にも昔の人は使っていました。
私は今でもこの“担ぎ棒”で植木を運びますし、植えた後に土を押してならす時にも使います」

足元には落ち葉やどんぐり。これからの季節は桜が咲き、季節の訪れを樹木から教えてもらえる

内田植木の畑には、公園にある木や街路樹のように大きな樹木もたくさん植わっている。どれも自分たちで掘り起こし、運び出すと言うから驚いた!畑を案内しながら「昔はよくここで木登りをしたり、かくれんぼしたりして遊んだんです」と懐かしそうに話す内田さん。小さい頃から森で過ごし、森に遊んでもらっていた。たった1本の木の棒も、ここでは最高の相棒になる!

「この“担ぎ棒”は本当に頑丈。“樫(かし)”の木でできているので、硬くて強度も高い。耐久性もあります。曾祖父さんの代から使われていたものを私が使うようになりました。小さい頃からこの棒を使って、森の中で遊んでいたんです。長くて強そうだったから!遊び相手が今では、仕事でも欠かせないモノになりました」

内田さんの家には、およそ80年前から建つ納屋がある。そこには、他にも昔から使っている道具がたくさんあると言う。その中でも、内田さんにとって特別な存在は“担ぎ棒”だった。
実際に見せてもらった“担ぎ棒”は、内田さんの背丈より少し長く、ところどころに木の節があった。一見するとただの棒のようだが、内田さんの手に収まるとすっと馴染み、頼もしい相棒のように見えてくる。“担ぎ棒”を持つ内田さんの無邪気な笑顔が印象的だった。



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