末永いお付き合い｜手づくり調味料研究家・オザワエイコさん

プロフィール
手づくり調味料研究家｜オザワエイコさん
自家製調味料の仕込み教室『かもしラボ』を主宰しながら、編集者としても活動。旬の食材を使った自家製調味料や保存食などのレシピを伝えるほか、発酵調味料や漬物などの発酵食品を仕込むことが得意。味噌やしょうゆをつくるための大豆や小麦をはじめ、四季折々の野菜を畑で育てている。ライフワークは畑仕事と自然観察。

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著書：『だからつくる 調味料』（ブロンズ新社）、『無印良品「発酵ぬかどこ」徹底活用術』（新星出版社）、『おいしいから作りたくなる まいにち発酵ごはん』（ナツメ社・共著）など

ついつい使いたくなる！金継ぎした器たち

「どれも、元々すごく高価な器という訳でもないんです。知り合いの陶芸家さんから買った器もありますが、骨董市などで出会った器が多いですね」そう言ってオザワさんが見せてくれたのは、欠けた縁が金継ぎされた器たち。

日常で器が欠けると、金継ぎできるようにとっておく。そうして、時間ができるとまとめて金継ぎをしてまた使う。オザワさんにとって、金継ぎする時間はなんだか心が落ち着く、愛おしい時間のようだ。

「骨董市で出会った器は、昔から受け継がれてきたモノが私のところに巡ってきた、という気がします。やっと手元にきた器を、欠けたからと捨ててしまうのはなんだか寂しい。金継ぎする前も普通に使っているのですが、金継ぎした後は以前よりつい手が伸びてしまう。金継ぎした器は、金継ぎする前よりもっと愛着が湧くものに変わっているかんじ。なんかかわいいんです」

「金継ぎって、本格的にやろうとすると出来上がるまでに何ヶ月もかかるんです。でも私がやっているのは、もっと簡単にできる『新うるし』などと呼ばれる合成うるしを使う方法です。本漆だと、かぶれてしまう人もいるんですが、『新うるし』であればかぶれにくい。
もともとがすごく高価なモノでもないですし、1日〜数日乾かせば使える。これぐらいカジュアルな方が、私には合っている気がします」

『新うるし』は、今ではホームセンターなどでも手軽に購入できる。手順は、欠けたり割れた部分を瞬間接着剤で修復し、足りないところがあればパテ（合成樹脂）でつけ足す。パテが固まったら紙やすりで削って平らにしたところへ、新うるしと金粉を練り合わせたものを塗って、乾かせば金継ぎの完成。ちょっとした手間をかけることで、器がまた使えるようになる。そして、意図的ではない金継ぎの模様は、それまでの器とはまた違った唯一無二の姿に変身する。

「若い頃は、器は普通に使えるものであればなんでも良いって思っていました。年齢を重ねるにつれて、お気に入りの陶芸家さんの器であったり、古くから受け継がれてきたモノなどを永く使いたいと思うようになりました」

オザワさんの“愛着”のあるモノは、金継ぎした器たちでした。手づくり調味料を仕込む時も、自分で育てたり顔の見える農家さんから材料を仕入れるように。オザワさんの元にやってきたモノのストーリーが、“愛着”を育んでいるのかもしれない。

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