#0 保存食のすゝめ

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「保存食」が食卓を豊かにする?
せっかくのお裾分けお野菜も「新鮮なうちに食べきれないかも…」と心配したことはありませんか?
たくさんもらったお野菜、買い過ぎた食材も保存食にすれば長期保存ができたり、料理のちょい足しにも活躍したりする。「保存食」には、食材を美味しく食べる知恵や工夫が詰まっています。
料理を楽しむことは、季節や旬を楽しむこと。無駄なく美味しく食べること、食べられるように工夫することは、豊かな食卓に繋がるのではないかと思うのです。

さっそく、奥深い「保存食」の歴史から紐解いていこう!

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    Mana Hasegawa

はじめに

私たち4Natureでは、「美味しい」「楽しい」「愛おしい」という3つのValueを掲げています。一つのテーマに「保存食」を選んだ訳ですが、私たちの生活はありとあらゆる「保存食」に囲まれています。すでに加工された出来合いの物を購入するのも良いのですが、目の前にある食材をより長く美味しく食べるために”工夫”してみる。わざわざ手作りして、手を動かし、どうやって美味しく食べるか…その試行錯誤の中に本当の”豊かさ”があるような気がするのです。

昔から引き継がれてきた保存方法を学びながら、心が温かくなるような「美味しい」「楽しい」「愛おしい」に向き合いたい。

保存食の歴史 

保存食について調べると、その歴史は非常に古い。人類がまだ野山の植物や動物、海の生き物を狩猟・採集していた時代から、すでに干し肉や干物などの保存食を食べていたというのだから、それだけ私たちの生活に馴染み深いものであることが分かる。

やがて人が食用に適した植物の栽培、家畜の飼育を始めると、さらに保存食が発展を始め、より食材を長く、さまざまな状態で保存する方法を研究するようになる。

そこから人類が文明を築き、国同士が交易をするようになると、食材を保存する目的から、”美味しさ”を人は求めるように。保存した食材をより美味しく食べるための研究や調理方法がそれぞれの地域で発展し、これらの調理方法は各地域の食文化とも繋がっていく。現在でも特産品やお土産に保存食が多いのも頷ける。

それにしても「食」に関して調べていくと、その時代の価値観やライフスタイルと結びついていることが多く非常に面白い!例えば、器。調理するために生まれた土器がいつから、見た目や料理の盛り付けに気を配った器へと発展していったのか…。と、話が脱線してしまったので、また別の機会に記事にしたいと思います。

保存食と日本のつながり

保存食は、日本人、そして日本食とも深い繋がりがある。

縄文時代には、すでにイノシシの燻製や貝類の天日干し、塩漬けなどの保存食が作られている。他にも、木の実を粉末状にして、シカやイノシシの血、野鳥の脂肪や卵などと混ぜて焼いた「縄文クッキー」と呼ばれるクッキーやパンのような保存食も食べられていたとか。ワイルドな作り方だが、一体どんな味がするのか!

さらに、弥生時代になると稲作が定着し、お米を発酵させてお酒を作っていた。また、「醤(しょう/ひしお)」と呼ばれるペースト状の調味料が作られる。醤は、麹と海塩によって発酵させて作られており、この醤から「未醤(みそ/みしょう)」という味噌の原型が生まれている。そして、鎌倉時代には現在のような「味噌」が誕生!

この味噌の誕生により、次は「醤油」に繋がっていく。醤油は、味噌から副産物的にできた「たまり」が液体調味料として発展したもの。室町時代には醤油の原型ができており、時代とともに発展し、今に繋がる日本食文化の土台の一つになっているのだ。

味噌だけでも、日本にはたくさんの種類がある。発酵や熟成には、微生物の働きが大きく関わっていて、気候や風土、水などの環境によって働き方も変わってくる。”どこ”でつくられたかで味が変わるのだ。「保存食」は”つくる”のではなく、”育てる”という感覚の方が近いのかもしれない。

保存食の分類

かつては特定の地域でのみ食べられていた保存食も、今では、技術や輸送手段の発展で特産物として親しまれている。保存食の分類を調べていくと、意外にも「これも、これも!」と保存食が身近にあることに気が付く。

【次回】

今後、「保存食」について理解を深めるイベントや、保存食つくりのワークショップの開催を予定しています。まずは、これからの季節に旬を迎える、梅やブルーベリーで何か楽しいことができないか目論み中。収穫作業の呼びかけやイベントの告知を随時行っていきますので、どうぞお楽しみに!


参考資料

知っておいしい保存食辞典/実業之日本社

「講座 食の文化」第二巻 日本の食事文化/社団法人農山漁村文化協会