保存食のすゝめ|農家さんの手前味噌づくり『アスナロ農園』

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いつもの食卓にあると、ほっとする。
なんなら毎日、毎食食べてもなぜか飽きないお味噌汁
そんな私たちの生活になくてはならない、『味噌』の味。
どうやら最近、自分で仕込む“手づくり味噌”が人気らしい。
でも、そもそも「味噌ってどうやってできるんだろう?」
「美味しい味噌ってどんな味噌?」
味噌のつくり手、味噌を愛する人たちに会いに行こう!話を聞こう!
今回は、自然栽培で育てた米や大豆を使い
畑で「味噌づくり体験」を毎年開催している『アスナロ農園』へ行ってきました。

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    Mana Hasegawa

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    Mana Hasegawa

プロフィール
アスナロ農園|農家
千葉県野田市の農園で農薬にも化学肥料にも動物性肥料にも頼らない自然農法で野菜を育てている。また、野菜を使った加工品(調味料、味噌、麹、お菓子など)も人気!自然の営みの中、すくすくと育った野菜は心も体も元気にしてくれる。マルシェや野菜セットの配送の他、年間を通して子どもも大人も畑で楽しめる“縁”農など、様々な体験イベントを行っている。イベントの最新情報は『アスナロ農園』のInstagramを要チェック!

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畑に会いに行こう|ブルーベリー
マーケットってどんな場所?『アスナロ農園』

手づくり大豆で仕込む『味噌づくり体験』

東京からも1時間ほどでアクセスできる千葉県野田市。駅から少し車で進むと、田んぼが並ぶゆったりとした風景が広がります。向かう先は、『アスナロ農園』。大きな日本家屋の前には、春夏にはのびのびと成長した野菜畑、秋には干した稲が並びます。

明るいスタッフの皆さんがお出迎えしてくれる『アスナロ農園』に、一歩足を踏み入れれば、心はまるで懐かしい故郷に戻ったかのよう。

家族で一つの味噌を仕込む。働き者の大きな手と小さな手

田植えやブルーベリー狩り、稲刈り体験など、年間を通して畑でのイベントを開催している『アスナロ農園』ですが、中でも「味噌づくり体験」は人気の“縁”農!取材した日も、5組の家族が「味噌づくり体験」に参加していました。

「みなさんの手には常在菌という菌がいます。それは味噌の味を決める大事な菌です。持っている常在菌はその人、その家族ごとに違います。ですから、材料はみんな同じでも、できた味噌の味は違います。出来上がりがとても楽しみですよね」

『アスナロ農園』顧問・小田桐さんの始まりの挨拶に、子どもたちのワクワクも高まります。大人も子どもも、一緒になって楽しみながら学べる、そして美味しい。そんな『アスナロ農園』の「味噌づくり体験」に密着してきました!

【下準備】自家製の大豆と米麹

ランダムで変わる大豆。この日は緑色が特徴的な「インバミドリ」

味噌の原料は、「麹・大豆・塩」とシンプル。だからこそ『アスナロ農園』では、“安全で安心できる素材”で味噌を仕込むことを大切にしています。
使う大豆は、農薬や化学肥料に頼らずに『アスナロ農園』で育てた大豆。今年は、インバミドリ、借金なし、トヨフサ、フクユタカの4種類の大豆をランダムで味噌づくりに使っています。仕込む前日から水に浸した大豆は、ふっくら楕円形に。十分に膨らんだ大豆は、コトコトと圧力鍋で柔らかくなるまで煮ていきます。

「去年つくった味噌と大豆の種類が違う!」とリピーターさんならではの気づきも!去年の味噌と今年の味噌。大豆の違いで味や色、香りの変化を楽しめるのも味噌の醍醐味かもしれませんね!

麹も手づくり!100%アスナロ農園の米でできた米麹

素材へのこだわりは、大豆のみならず麹にも。使う麹は、すべて同じく無農薬で育った『アスナロ農園』の米からできています。一家族1kgの大豆と麹を使用するため、用意する麹の量もたくさん!つくるのが間に合わない場合は、仲良しの農家さんに米をお渡しして麹にしてもらっているそうです。

農家さん同士の助け合いもあってできた麹を、味噌づくりでたっぷりと使います。



【STEP.1】麹と塩を混ぜる

家族ごとに麹を囲む。広い和室が家族の笑顔でいっぱいに

開始時間になると、続々と参加の家族が集まってきました。すでに『アスナロ農園』の縁農リピーターさんも多く、お子さん同士で早速遊びはじめる光景も。その様子は、まるで親戚が田舎のおばあちゃんの家に集まってきたかのよう。

それぞれ手を洗い、いよいよ味噌づくり開始です!まずは、用意された麹1kgを手でほぐしていきます。初めて味噌づくりをする家族も多く、最初は麹に触れる手もおそるおそる。次第に、しっとりほろほろの麹の感触に病みつきに。大人も子どもも一緒に麹をパラパラにしていきます。

念入りにほぐしたら、塩を混ぜまぜ

しっかりと麹のかたまりがほぐれたら、次は塩と混ぜていきます。
「塩は400gあります。全部麹に入れずに、一掴みほど少し残しておいてくださいね。最後に塩で蓋をします!」
味噌担当の八木澤さんの指導で、続々と次の工程に進んでいきます。「残す塩はこれくらいですか?」と八木澤さんに質問する光景は、先生に質問するようで懐かしい気持ちになります。



【STEP.2】煮た大豆をつぶす

しっかりと踏んで、大豆を潰していきます

次は大豆の準備、冷ました大豆を潰していきます。おたまやマッシャーで潰しても良いですが、袋に大豆を詰めて足で潰していくと早い、そして楽しいですよ!

「食べ物を踏むのはちょっと変な感じだね」と優しく潰していくお子さんがいたり、元気に勢いよく踏む子がいたり。お子さんごとの個性が輝いていました!大人もつい黙々と潰す作業に没頭。1kgの大豆がどんどんと姿を変えていきます。

お鍋いっぱいの大豆に興味津々!



お気に入りのヘラで大豆を集める八木澤さん。袋に残った大豆も無駄にはしません!

「色々試したけれど、この特大ヘラがベストなの!袋に残った大豆を綺麗に集められるんですよ」
そう言って、楽しそうに大豆をかき集めるお茶目な八木澤さん。大豆の潰し具合もお好みに調整できるのが、手づくり味噌ならでは。あえて豆のつぶつぶ感を残しておいたり、なめらかに潰しておくこともできます。



【STEP.3】大豆・麹・塩をよく混ぜる

家族みんなで味噌を混ぜまぜ!

準備した塩入りの麹と大豆をさらに混ぜ合わせていきます。大豆だけ、麹だけの部分ができないように念入りに。ついついクセになる、ほどよく柔らかい味噌の感触。家族のたくさんの手、手にいる常在菌が味噌をさらに美味しくしてくれます。

手についた味噌を味見するお子さんも。味見しすぎると完成の味噌が少なくなってしまうので、くれぐれも食べ過ぎ注意です!



【STEP.4】空気をよく抜いて、容器の中へ

容器に仕込み味噌を隙間なく詰めていく




これまで味噌づくりにあまり乗り気でなかった子も、ここまでくると楽しそう!

いよいよ味噌づくりも佳境に!仕込み味噌を容器に詰めていく作業です。
ハンバーグをつくるように、空気を抜きながらお団子をつくっていきます。まずは、容器のそこにお団子を詰めて、底を埋めていきます。底の方が埋まったら、いよいよお子さんも大好きな工程!

丸めたお団子を容器にバンッと投げつけていきます。コントロールを外して容器から溢れることもあるけれど、投げつけることで空気が抜けるので勢いが大事!まるでボール遊びをするかのように、子どもも大人も無我夢中で投げ込んでいきます。

残しておいた塩を振りかけて、カビ防止!

すべて容器に詰めたら、真ん中が少し盛り上がるように表面を整えます。さらに、残しておいた塩を振りかけて、カビ防止。ラップで密閉して蓋をします。『アスナロ農園』の味噌づくりでは、暑さが心配な夏終わりまで味噌を保管してくれます。ちょうど、稲穂を収穫する秋以降、みなさん味噌を受け取りに。そして、秋に収穫した米はまた味噌づくりの麹にも使われていきます。

食べ物が誰にどうやって育てられて、届くのか。その循環を自然に感じ、学べる素敵な体験ですね。



【STEP.5】名前をつけて、保管!仕込み完了

完成した仕込み味噌に「名前」をつけて保管します



5家族分の仕込み味噌。熟成して完成した味噌が今から楽しみですね!

『アスナロ農園』の味噌づくりは、ここで終わりではありません!「みなさん、お絵描きの時間ですよ!」八木澤さんの声がけとともに、紙にペンを走らせるお子さんたち。
どの容器が誰の味噌か分かるように、日付と名前、そして「味噌の名前」をつけていきます。味噌のイラストを描いたり、思い思いの好きなイラストを一つの大きなテーブルの上で描き進めます。今日出会ったばかりのお子さんも、気がつけばみんな友達に。

同じ作業をともにした親御さんたちも、終わった頃には一緒に片付けをしたり、お話したり。穏やかで平和な時間が流れていました。

愛着が湧いちゃって、と抱き抱える姿もありました



一緒に仕込んで、一緒に食卓を囲む

たくさん動いた後は、たくさん食べる!



アスナロ農園の新鮮な野菜をたっぷりと。

『アスナロ農園』での縁農では、作業の後にお昼も一緒に食べられます!暖かい季節は外でバーベキュー、冬はしゃぶしゃぶです。使う野菜はもちろん『アスナロ農園』で育った元気で新鮮な野菜をたっぷりと。味付けはこれまた自家製の塩麹と醤油麹でいただきます。炊きたてのご飯と酵素玄米ご飯とともに食べるしゃぶしゃぶは、たくさん動いた後の空っぽなお腹にどんどん消えていきます。

大きなテーブルをいくつも並べて、同じご飯を食べる。大人数で「いただきます」を言うのは、いつぶりだろう?お昼の参加費は縁農とは別ですが、ぜひ『アスナロ農園』に来た際は一緒にお昼も食べてみてくださいね!

手軽に買える味噌を“あえて”つくってみる

味噌担当の八木澤さん。いつもお茶目で明るい笑顔が素敵です

今回はご家族連ればかりでしたが、学生さん同士や大人の方のみの参加者さんも多い味噌づくり体験。『アスナロ農園』で始める前から、味噌づくりをしていたという八木澤さんに、味噌への想いをお聞きしました。

味噌づくり体験に毎年参加してくれる人も多く、今では初めて参加したのが小学生だったお子さんが、味噌づくりに参加するうちに成人した人も!
大豆と麹、塩の分量は、味噌の出来をみながらアップデートし続けていくうちに見つけたそう。大豆の煮方や分量、豆の品種といった微調整からは、楽しみながら味噌をつくって欲しいという八木澤さんの想いが伝わってきます。

靴箱に並ぶ、大小さまざまな靴たち。

初めましての人とも、味噌づくりが終われば友達に。なんだか乗り気じゃなかった人も、ついつい夢中になってしまうのが味噌づくり。過去に「いつでも買える味噌をなんでわざわざつくるのか?」と不機嫌だった参加者が、誰よりも一生懸命、味噌を混ぜていたなんてこともあったそう。

「周りの子が、もう辞めようと止めるくらいずっと混ぜていてね。その味噌がすごく美味しかったんです!その子のおかげで、よく混ぜることが美味しい味噌には大事なんだと気づけたんです。
何でも買えば済む時代に、何にお金をかけるのか。あえて、買える味噌を自分でつくってみることで、食べ物や健康について考えることも増えますよね。
体に悪いと思いながら手軽で安いものを食べる。その結果、体を悪くして病院代がかかるかもしれない。それとも、ちょっと高いけれど安全で体に良いものを食べて健康に過ごすのか。どっちが良いかを考えてみる。味噌づくりがそのきっかけになったらいいな、と思っています」

手前味噌はやっぱり美味しい。それは手間ひまかけた時間と愛着があるから。そして、何よりも楽しみながらつくることが健康と美味しさに繋がるのだと、『アスナロ農園』の味噌づくり体験で教えてもらいました。


『宮本みそ』さんと一緒に仕込む“味噌仕込みワークショップ”開催!

『宮本みそ』の味噌仕込みキットを使って、みんなで一緒に味噌づくりをしませんか?
ただ説明書を見て仕込むのではなく、味噌屋ご主人・宮本晃裕さんから味噌仕込みのレクチャーと工房ツアーもお願いしています。普段なかなか会うことのできない、味噌のつくり手とお話ができますよ!
味噌づくりが初めての方も、こなれた“味噌ラバー”な方も、この機会にぜひ一緒に“自家製手前味噌”を仕込みませんか?



ワークショップ情報

日時:4月27日(土)10:00〜12:00
場所:オンラインにて開催(全国どこからでも参加できます!)

概要:
・『宮本みそ』の味噌づくりキットを使った味噌仕込み
・宮本さんによる、味噌仕込みレクチャーと工房ツアー
・宮本さんへ味噌に関する質疑応答

チケット販売ページはこちらから!




アスナロ農園

住所:

千葉県野田市莚打1907-3